エピローグ 最果ての約束

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* * *  3年ぶりだろうか?  久々に見たダニエルーーダンは、随分と大人びていた。  背丈も2回りくらい大きくなっていて、オレは驚いた。 「本物だ。夢じゃない……っ!」  紳士が門を開けると、ダンはオレを抱きしめた。 「ああ、兄さん……本当に生きてた……っ!」  その時、背後の屋敷の玄関が勢いよく開いた。 「兄ちゃん!!」  続いて、ものすごい勢いで走ってきたのは1番下の弟だ。  サッとダンが避けると、目一杯腕を広げてオレの腰に突撃してきた。 「うわーーーん兄ちゃーーーーん!  いぎでだーーー!!」  オレは両手を目一杯広げて、チビを抱きしめる。 「ギル……男が泣くなつったろ……」  声を上げて泣くチビに鼻の奥がツンとする。  今年で確か、9歳だったか。ギルは丸々太っていた。  力強く抱きしめてから手を離す。  ふと顔を持ち上げると、少し遠くから不安そうにこちらをみる幼女の姿があった。 「あいつ、もしかして……」 「何してるんだよ、クリス」 「だれ?」 「1番上の兄さんだよ」  ダンが呼ぶ。  クリスは躊躇った後に、恐る恐るオレに近づいてきた。  家を出た時、まだ2歳だったクリスだ。 「いちばん、うえ?  ダンにーによりちいさいのに?」 「背丈は関係ないよ」 「でっかくなったな、クリス」  抱き上げようとすると、  クリスはサッとオレの手から逃げ、  慌てたようにダンの後ろに隠れてしまう。  少し寂しく思いながらも、オレはダンに目線を戻した。 「悪いな、突然」 「や、事前に手紙を貰ってたから。  でも……半分、イタズラかと思ってたんだよ。  兄さんとはもう会えないと思ってた」 「オレも会うつもりはなかったよ。でも……」 「俺たちに挨拶したいって言ってたのは、そちらの方だね?」 「は、初めまして」  ユリアが緊張した面持ちで頭を下げる。 「ユリア・キャンベンディッシュです」 「彼はオレの仕えてる主人でーー」  途中でオレは言葉を飲み込んだ。  こういう場合、なんて言えばいいんだ?  というか、ユリアは手紙で何て伝えてたんだ?  その辺りのことをすっかり確認し忘れていた。  結婚します。なんて言っても、同性婚が認められてるわけではないから、  形ばかりのものだし。兄が伴侶に男を連れてくるのも……  まあ、ダンはオレの仕事を知ってたから、驚くようなことはないだろうが、  他の弟妹はどう思うだろう?  少なくとも驚くよなぁ……  などと言葉を探していると、 「突然、すみません。  彼と結婚を考えていまして、ご挨拶に伺いました」  隣でユリアがあっさりと告げてしまう。 「結婚……って、兄とですか?」
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