エピソード3 可愛がられるのも世話焼きのうち?

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エピソード3 可愛がられるのも世話焼きのうち?

 朝日が昇る頃。 「さて、と。今日からも、しっかり働きますか」  メイドが届けてくれた服に腕を通し、オレは髪をなでつけた。  どう頑張って働いても給料分には届かなそうだが、だからといって楽をしようとは思わない。  この頑張りが、家族のためになるなら尚更だ。 「ひとまず、ユリアのところにいくか」  身分の高い人間は自分で身支度をしないと聞いたことがある。  その時は、そんな馬鹿げた話があるかよと鼻で笑ったが、世話係なる仕事がある以上、嘘じゃなかったのだろう。 「着替えやらなんやらの手伝いをして、それから……どわっ!」  一日の動きの予測を立てつつ部屋を出たオレは、  扉の前で立っていた人物にぶつかった。――ユリアだ。 「おはようございます、バンさん」 「おはよう……って、おま、なんで……着替えてんの? 自分で着替えたのか?」  鼻を抑えながら見上げた主人は、少し髪に寝癖がついていたが、しっかりと身支度を調えていた。 「? はい。ええと、僕、そんなに何も出来ないように見えます?」 「いや、偉い人って自分でやらねぇって聞いてたから……」 「僕は自分でやりますよ。人にやって貰う方が面倒ですし。  ドレスを着るとかならともかく」 「そりゃそーだ。  それで? ユリアはどうしてここに?」 「朝ご飯までもう少し時間があるので、少しお散歩でもしようかと思いまして。  窓からバラ園が見えるでしょう? 花びらが朝露に濡れて綺麗なんですよ」  オレはユリアと連れ立って階下の庭園に向かう。  散歩を終えると、一緒に朝食を取った。  飯は絶対に食べきれない量のパンとフルーツとスープとサラミと生ハムと……  とにかく、物凄い量が出た。  もちろん食べきれなかった。でも、どれもこれも美味しかった。  夢にまで見そうなほど、まじで美味しかった。  それから、屋敷の案内をしてもらい、  おやつ時には、さっき散歩したバラ園でティーパーティーが開かれて―― 「オレ、全然、世話焼けてねぇんだが!?」  シルクのような口触りの紅茶を一口すすってから、  オレは耐えきれずに、席を立った。
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