愛別離苦《あいべつりく》に沈む

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私と輝子が結婚したのはお互いに43歳で、どちらも初婚だった。 高校の同窓会がきっかけで、実に25年ぶりの再会だった。最初はお互いに興味もなく、社交辞令的に挨拶をした程度だったが、二次会になると酔った勢いで後日食事に行く約束をした。 何度か食事に行くうちに、冗談半分でお互いに孤独死だけは避けよう、どっちかに何かあったら元気なほうが面倒をみようと、同じ歳の輝子には不利な条件で一緒に暮らすことになった。 40過ぎて同棲をするのは面倒なことが多く、お互いのライフ・スタイルを考えた結果、勢いで入籍してより広い方の家に住むことで話が進んだ。 輝子はいままで住んでいたマンションを引き払い、私のマンションに引っ越してきたが、驚くほど荷物が少なく、残りの人生を考えると荷物は少ないほうがよいと、私には到底できないほどの思い切った断捨離をしてきたとのことだった。
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