花火

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待ち合わせは駅。 時計は6時になろうとしていた。 ちいちゃんも会場まで一緒に行くことになって、一緒に先生を待つ。 「伊藤、驚くよー!浴衣姿なんて見たら!絶対びっくりするから!響超かわいいもん!」 ちいちゃんが言う。 「そうかなぁ?」 そんな話をしていると、前から歩いてくる先生の姿が見えた。 ドキドキして待つ。 私たちを見て、近づいてきた先生。 「よお。千草もいたのか。」 が、第一声だった。 先生は淡々と、そう言う。 「ちょっと!うちら見て何か言うことないの!?」 と、ちいちゃんは先生に食ってかかっている。 「何だよ」 先生もちいちゃんの言葉を軽く交わしている。 「浴衣だよ?かわいいな!とかさぁ!そーゆーの無いわけ?」 ちいちゃんがそう言うと、先生は私達をじっと見た。 「、、、あぁ。浴衣だな。」 先生らしくて、くすっと笑ってしまう。 けれど、ちいちゃんは先生の態度に納得がいかない様子だ。 「それだけー??響、超かわいいでしょ??私が髪の毛やってあげたんだよー!お化粧もー!」 ちいちゃんがそう言うと、先生は、私を見る。 「、、、あー、かわいい、かわいい」 と、素っ気ない言い方をする先生。 先生らしいなぁと笑ってしまう。 ちいちゃんもいるしなぁ。 「感情こもってなーい!」 ちいちゃんの言葉をスルーして、「さっさと行くぞ」と、歩き出す先生。 駅から地下鉄に乗り換え、花火会場まで行くのはいいのだけれど、、、。 人が多すぎて、流れに飲み込まれそうだ。 前に進むのもままならない。 「すげえ人だな。これ辿り着けんのか?」 先生も、うんざりしているようで。 「どーだろ。」 私も苦笑いをしてしまう。 せっかく着せてもらった浴衣も、なんだか、人混みで着崩れてしまいそうで。 「浴衣着崩れちゃうー!!」 ちいちゃんの口からも文句がでてしまうくらい、人の流れに巻き込まれそうだ。 誰かの肩がぶつかり、「あっ」と声が出てし そんな私を見て、さっと私の手を握る先生。 「ほら、ちゃんと付いて来い。」 先生の手を握りしめて歩き出す。 そんな私たちを見て、ちぃちゃんが目を丸くした。 「あー!手繋いでるー!!」 と大きな声をあげるちいちゃん。 「いちいちうるせえな、おまえは。いーだろ、別に。付き合ってんだから。」 先生はそう言って、ちいちゃんをさらっと交わす。 「だって!だってー!!南高の生徒に見られるかもよー??」 ちいちゃんが隣で言う。 「いーよ、見られても。別に。」 先生はそう言って淡々と歩く。 恥ずかしいけれど。 嬉しい。 ちいちゃんの前で、手を繋いで歩くなんて。 なんだか照れくさくて、ちいちゃんの顔をあまり見れない私。 隣でちいちゃんは、口を尖らせて 「あー、私も早く渚に会いたい!」と言っている。 そうだよねぇ。 場所取りをしている渚に申し訳ない気持ちになりながら、会場へと向かった。
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