花火

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「ちいちゃん、どうかな?」 「響かわいい!!お化粧してあげる!!」 夏休みも始まり、今日は河川敷で花火大会がある。 ちいちゃんのお母さんに浴衣を着せてもらい、鏡から、ちいちゃんに浴衣姿を確認する。 ちいちゃんはお化粧してあげると、はりきっている。 「変じゃないかなぁ?」 「かわいいよー!その浴衣、響に超似合ってる!!」 薄い青に、アサガオが散りばめられた浴衣。 ちいちゃんと、この前一緒に買いに行ったんだ。 ちいちゃんは、ピンクにヒマワリが散りばめられた浴衣だ。 「ちいちゃんも、その浴衣すごくかわいいね。」 そう言うと、ちいちゃんは喜んでいる。 「でしょー??これ、一目で欲しいと思ったんだ!」 2人で浴衣を着て、鏡で2人で確認し合う。 「響ちゃん、似合ってるわー。」 ちいちゃんのお母さんにも、褒められて、 少し恥ずかしい。 「早く渚に見せたいなー!」 ちいちゃんが、そう言うと、ちいちゃんのお母さんは、少し呆れ顔。 「あんたは、渚、渚って、、、彼氏の事ばっかりだね!響ちゃんの落ち着きを少し見習ったらどうさ!」 ちいちゃんのお母さんにそう言われて、苦笑いをする。 落ち着いてるかなぁ?私、、、。 そうでもないんだけどなぁ。 「早く部屋行って化粧しよう!」 ちいちゃんに腕を掴まれて、部屋へと連れていかれる。 「響はピンクパールが似合うよ」 ちいちゃんはパレットを広げて、やる気満々。 「いや、そんな少しでいいよ。あんまりお化粧すると、先生嫌がるし、、、。」 「えー!そうなのー??。伊藤、響が可愛くなるの嬉しくないのー?」 不満げにそう言いながら、ちいちゃんは薄化粧をしてくれた。 この夏が始まる少し前、私は先生と初めて身体を重ねた。 初めての経験をした私。 ちいちゃんに告げると、驚きながらも自分の事のように良かったねと涙ぐんでくれた。 恥ずかしいけれど、1つずつ階段を登っている私たち。 「でも、花火大会伊藤と一緒に行けてよかったね!」 ちいちゃんが言う。 花火大会、、、。 去年は、陰から花火を見た。 それでもすごく嬉しかったんだよなぁ。 でも、今年は、正々堂々と、一緒に見られる。 正直、花火大会の話をした時、先生はめんどくさそうな顔をしていたんだけれど、、、。 それは先週の話で。 先生の家で過ごしていた時に、私から誘ってみたんだ。 「来週花火大会あるんだけど、一緒にいける??」 「花火大会?。あー、もうそんな時期か。」 「うん。来週の土曜日だよ。」 「すげえ人混みだろ。」 あからさまに、嫌な顔をする先生。 「、、、うん。」 先生と付き合う前までは友達と行ったりしていたから、すごい人混みなのは知っている。 人混みが嫌いな先生。 あぁ、やっぱり、ダメかなぁ。 半分諦めかけた時、 「いいよ。去年は陰からしか見れなかったしな。おまえ、行きたいんだろ?」 そう言って、仕方ねぇなと言いながら、しぶしぶ行くことを了承してくれたんだ。 そんな会話を思い出す。 「先生人混み嫌いだから、たぶんすぐ帰ると思うけど。」 ちいちゃんにそう言うと、ちいちゃんは、 ふっふっと笑って、「そこは大丈夫!!」 と、何かを企んでいるような顔をする。 ??? 「ちゃんと、場所取りしてあるから!」 「え?」 場所取り?? 「渚にもう頼んであるんだー!」 ちいちゃんは先手先手を打っているようで、 渚に、場所取りさせていると言う。 人混みで、立って見る事になるかなと思っていた私は、ちいちゃんの行動の早さに感心してしまった。 さすがちいちゃんだぁ。 でも、なんだか渚に申し訳ないけれど、、、。 「渚先に行ってるの?」 「うん!ちゃんと別々に二ヶ所場所とってくれてるって!」 別々に二ヶ所、、、。 一緒でもよかったんだけどなぁ。 少し恥ずかしさもあるけれど、ちいちゃんの気遣いが嬉しい。 「ありがとう。ごめんね?」 そう言うと、ちいちゃんはニヤッと笑った。 「花火だよー??イチャイチャして見たいじゃん!!!」 と楽しそうに言っていて、、、。 イチャイチャ、、って。 そうか、そーゆーものなのか。 でも、楽しみだな。 ちいちゃんに髪の毛をアップにまとめてもらう。 鏡越しに見る自分は、少し大人っぽく見えた。
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