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3.「似姿の儀式」サンプル
同人誌用の書き下ろし作品です。
【あらすじ】
昭和初期、双子で生まれた密(みつ)は、忌み子と言われ蔵での生活を強いられていた。家庭教師に性的ないたずらをされて心が折れそうな時、双子の弟の響也が見つけ出してくれる。
響也は色んなものを差し入れ密を気遣ってくれるが、自由は与えられず、家庭教師のいたずらもおさまらない日が続き……。
【サンプル】
澤村が密みつにすることは、日を追うごとにエスカレートしていった。
はじめは着物のあいだから体を弄られるだけだったが、今では着物を当然のようにすべて取り払われ、あられもない姿で胸や性器をさわられる。
今日も授業が終わやいなや着物を剥がされ、澤村の目の前で射精まで促された。蛇のような掌が己の肌を滑るあいだ、密はじっと耐えて澤村の望むような態度をするしかない。
―助けなど来ないことは知っている。
それに、相手は立派な体躯をした大人だ。抵抗するとなにをされるか分からない。密は世間から離されて暮らしているから、こんなことをされるのがおかしいと感じる自分が間違っているのかもしれない、と思った。
密の小ぶりな性器に付着した白濁を拭いながら、澤村が息を荒げる。
「幼い頃からきみを見守っていたけれど、こうやって私の手で射精してくれるなんて感無量だ。こんなに従順なら、もっと早くから仕込んでおけばよかったのかもしれないな」
(仕込むって……!)
自分は曲芸をする動物並みに思われているのだと衝撃を受けた。そんな密の怒りに気付かず、澤村は頬を撫でてくる。
「今度の授業まで、きちんと勉強しておきなさい。……もうすぐきみが大人になる誕生日だ。待ち遠しいよ」
意味深な言葉を残して澤村が去ったあと、密は抜け殻のように、裸のまま板間に転がった。澤村の湿った手の感触が、今でも残っていて気持ちが悪い。
(いやだ。助けて。だれか助けてくれ……!)
「密、いるか?」
頭上から響也の声がした。いつものように蔵のそばの楠に登っているのだろう。
(響也!)
密は反射的に床に置かれた着物をひったくり、前をかき合わせた。
「ごめん、一階にいたんだ。さっきまで先生が来てたから」
「えっ、危なかったな。ごめん、これから声を掛けるときはもっと周りを見る」
そういえば、と響也が密を見上げ、指差した。
「教師が来てたんなら言うけど。密、髪の毛くらい梳(と)かせよ。ボサボサだぞ」
「!」
言われた瞬間、瞳から涙が溢れてしまった。双子の弟でさえ、密の置かれた状況を露ほども気づかない。密の苦しみや悲しみを、知る由もないのだ。
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