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我らが筑波
夏の筑波山は雄大な入道雲を背負い、生命力が漲っている。裾野に広がる田んぼには稲が青々と繁っている。田んぼはどこまでも広がっており、常磐線の車窓から見えるのは田んぼばかりだ。
「はあ、何もねえや……」
沖田幹人は車窓の風景を眺めながらため息まじりに呟いた。たまに視界を遮るのは雑木林で、高い建物などどこにもない。こんなに何もないと気づかずに十八年もここで暮らしていたのかと思うと愕然とする。
東京の大学に進学し、一人暮らしを始めて四か月。授業とバイトとサークルが忙しく、実家に帰るのは今日が初めてだった。
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