Prologue
1/2
1/61

Prologue

「おーい、由羅ゆら。起きろ。今日は大森さんが来る日だろ?」  かなではベッドの端に腰かけて、由羅を揺り動かした。 「……うん、奏……」  いつも寝起きの悪い由羅は、今朝もまだ眠っていたいようで、奏の腰に腕を回しすがり付いてくる。奏はそんな由羅に微笑みを浮かべて、顔にかかった髪を払ってやった。すると、さらさらとした黒髪の下から露になったのは、白くてすべすべした頬。奏はその白くすべらかな頬を撫でながら、由羅の耳元に口を寄せた。 「ほら、一緒に朝飯食おう?」 「うん」  由羅はむずがる子どものように奏の腹に顔を擦り付けながら、小さく頷く。 「由羅」  奏は囁いて、由羅の頬にちゅっとキスをした。途端に由羅が身を起こし、奏の唇に食いつくようなキスを仕掛けてくる。 「うわっ、ぁ、ちょっ、……ん、……ゆらっ……んんっ」  キスはあっという間に深くなって、油断していた奏は由羅に押し倒されて喘ぎ声をあげた。うっすらと目を開けた先の、由羅の瞳に灯った思わぬ熱にどきりとする。  由羅の瞳の色に気を取られていると、由羅の細い指が怪しい手つきで奏の腹を撫で始めた。まずい。発情期も近いし、このままでは流される。そう思った奏は、ありったけの力で由羅を押し返した。 「由羅っ!」  幸い奏はΩにしては身長も体力もあるので、頑張れば華奢な由羅をなんとか引き剥がすことができる。しかし、キスのせいで息も絶え絶えだ。 「っはぁ、はぁ……これ以上は、ダメ」 「だって、奏、いい匂いするんだもん」  息を整えながら髪を撫でてやると、子どものような扱いが気に入らなかったのか、由羅が拗ねたように奏の首筋に鼻を寄せ、くんくんと匂いを嗅いできた。 「ふはは、擽ったいって。ほら、朝飯冷めるよ」  奏は笑いながらベッドから降りて、由羅の手を引き立ち上がらせた。もちろん奏だって、このまま由羅とベッドになだれ込んでしまいたい気持ちがないわけではない。しかしこの後来客の予定が入っているのにそんなことができるほど、奏の神経は図太くなかった。情事の後を残して人様の前に出るなんてまっぴら御免だ。
1/61

最初のコメントを投稿しよう!