王子様になれなかった騎士の独白

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その日も食堂でいつものように二人で昼食をとっていると、数人の女の子のグループが躊躇いがちにこちらに近づいて来た。同じ学部で、時々授業も一緒になったことのある子たちだ。 「あの、えっと、……相楽君がΩって、本当なの?」  彼女たちのうちの一人が、どこか気まずそうに訊ねてきた。恐らく、相楽のことを気に入っていたのだろう。その瞳には不安の色が浮かんでいる。しかし、相楽は表情を崩さずににこりと笑った。 「そうだよ」 「……そ、そっかぁ。ごめんね」  女の子は顔を引き攣らせて愛想笑いを浮かべると、友達に付き添われてそそくさと去って行く。その背中が完全に遠ざかると、相楽がはぁと溜め息を吐いて俯いた。 無理もないだろう。大学では基本的にバース性を公表しないことになっている。自分からαであることを吹聴するような一部の例外はいるが、公共の場で相手のバース性を訊ねるのは御法度だ。 「気にするなよ」  そう声を掛けると、相楽が顔を上げ眉を下げて雄星を見た。 「梅原ももう知ってるんだろ?俺が、告白されたって」 「うん、知ってるけど」  頷くと、相楽が苦しそうな顔をする。 「……騙されたとか思ってる?」  相楽は、自分がΩであることを雄星に告げていなかったことを気にしているらしい。だけど、雄星にはそんなことはどうでもよかった。だって、最初から知っていたから。 「思ってないよ。てか、前から知ってた」 「え、い、いつから?」 「入学式の時から」 「え!?」  入学式の時から相楽がΩだと気づいてた。確かに容姿だけではΩだと判断できないが、αの感のようなものですぐにΩだとわかってはいた。わざわざ口に出すことをしなかっただけだ。 「俺だけ知ってるのはフェアじゃないから言うけど、俺はαだ」 「ええ!?」  相楽が目を丸くして驚いている。その表情に雄星は笑った。雄星はβの中にいればイケメンと言われるし、スタイルだって悪くはないが、他のαたちの中にいると些か地味に見える。Ωはα程バース性に関して敏感な感覚を持っていないから、相楽も雄星をαだとは思っていなかったらしい。 「じゃあ、何であの時俺に声掛けて来たんだ?」 相楽が、今度は不思議そうに首をかしげる。 「何となく、友達になれそうだと思ったから。言っとくけど、下心なんてなかったからね」  確かに、αとΩが友人関係になることはほとんどない。なったとしても、すぐに恋愛関係になってしまうことが殆どだ。だけど本当に、あの時相楽に声を掛けたのは下心があったからではない。それでも、入学式で初めて会った時、相楽のことを綺麗だと思ったことは口にはしなかった。
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