番ができました
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番ができました

「ただいまー」  未だ実家暮らしの奏は、重く気怠い身体を引きずるようにしてようやく自宅に帰り着いた。由羅のマンションから自宅まで電車を乗り継いで20分。毎朝の通勤とそれほど変わらないのに、精神的にも肉体的にもすごく疲れた。 「あれ、お兄ちゃん今帰り?」  リビングに入ると、大学生の妹かおりがソファーにだらりと寝そべって、ケータイを弄っていた。いつもの光景にほっとする。 「うん。父さんと母さんは?」 「今日、デートの日」 「ああ、そっか」  両親は未だに毎月一回は欠かさず二人でデートに出掛けるほど仲が良い。どうやら今日がその日だったらしく、恐らく夕飯前まで帰ってこないだろう。 「じゃあ、俺ちょっと寝るから。父さんたち帰って来たら起こして」  家に帰って来て気が抜けると一気に疲れが押し寄せて、一刻も早く重い身体をベッドに休めたかった。 「わかった。あ、結婚式の後で朝帰りとか、もしかして良い出会いでもあったの?」 「あー、うん、まあ。後で詳しく話すわ。とりあえず寝る」 「えー、嘘!?今聞きたい!」  にやにや笑いながら訊いてくる薫に言い置いて、奏はそそくさと2階の自室に引っ込もうと背を向けた。後ろで薫が喚いているが、今はとても相手をする気にはなれない。  両親が帰ってきたら、番ができたことを家族に話さなければならない。そう思うと気が重い。奏の両親は昔からあまりうるさくせず、奏や薫を本人たちの自由にさせてくれていた。それでも流石に、いきなり昨日出会ったばっかりのαと酔った勢いで番になりました、なんて報告したら一体どんな反応が返ってくるのか想像もつかない。  奏は家族の反応を想像して呻きながらベッドに倒れ込むと、あっという間に眠ってしまった。
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