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凛々子
「ごちそうさまァ」
「───って、ちょっと待て。座れ」
私はテーブルの向かい側で立ち上がった凛々子の、両肩を押さえた。凛々子は、すとんと座り直した。ここはうちの学校のカフェスペースで、弁当の持ち込みが許されている。
「凛々子、まさか見えていないわけじゃあないだろうと思うけど、今あなたの目の前にあるのはなぁに?」
「香代さまの手作り弁当にございます」
「うんうん、見えてはいるわけね。そこが問題よ。ほぼ手付かずのそれをそのままに、あなた今なんて言いました?」
「ごちそうさま、にございます」
「素直に応えりゃいいってもんじゃないわよ!」
私はブチきれた。
「あんた、まだダイエット続ける気なの?!」
「だって彼が」
「『棒みたいな手足の女が好き』つってんだってね。女に食わさない男なんて、ろくなもんじゃないわよ! 弱々しい女が好きな男なんてね、しょせんは女のことが怖い、ガキんちょなの!」
「ひとの彼氏をそこまで言うかなぁ」
凛々子は笑ったが、笑える話ではないのだ。身長163センチの凛々子の体重は、もう 42 キロをきっている。ダイエッターに聞かせたら、質問責めにあいそうな体重だ。なのに、まだダイエットを続けるという。
私はひとまず気を落ち着けて、凛々子にカレー味ご飯とレバーの竜田揚げを、もう一口ずつ食べさせた。
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