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俺の米愛《こめらぶ》が間違っていた話
甘い香り鼻腔をくすぐられて俺は目を覚ました。
どうやら、うとうとしていたらしい。
春も深まり、そろそろ夏が近づく今日この頃。
炬燵が無くても部屋の中は十分に過ごしやすい。
部屋の中に漂うこの香りは、言うまでもなくご飯を炊いている香りだ。
もうすぐ炊き上がる。
そう思ったその時、エプロン姿の女が部屋の方に顔を覗かせた。
「ご飯、出来たよ」
台所で昼食を作っていた恋人の明菜だ。
「おまたせー」
そう言いながら、お櫃を持って部屋に入ってきた。
「お、来たな」
明菜からお櫃を受け取って開くと、フワッと漂う炊きたての白飯の香り。これを嗅ぐだけで胸が躍り出す。やはり日本人は米だよな。
「今日はね、いい高菜漬けがあるから……」
「それは後だ。まずは米だけを食べたい」
「……分かった」
彼女はちょっと残念そうに項垂れながら、俺の茶碗に白飯をよそってくれた。
俺は米が好きなんだ。米を愛していると言ってもいい。いわゆる米愛だから、米だけを味わいたいんだ。
それは明菜も分かっているはずなのに、どうしていつもおかずを進めてくるんだろう。
いい加減にしてほしい。
米を炊くのが美味いのは認めるけれど、そこは改善して欲しいよなぁ。
米好きってのは、米を味わいたいもんなんだ。
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