二章 拒絶

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二章 拒絶

心の壁を出るって言ったってどうやって出るんだ? 僕は青馬の様子を伺った。 青馬はお爺さんに近づいた。 「すみません。僕たちN小学校の生徒なんですが、学校の宿題をやっていまして、この辺で親切なことをしようとしているんですが、ご迷惑じゃないですか?」青馬はすごく適当なことを言った。 心の壁を出るってお爺さんに不審感を与えないってことか。 お爺さんが僕たちを不審に思ったら思うような返事を聞けないということね。 僕は青馬のよく回る頭脳に感心した。 と、同時に学校の宿題をやっているなんて適当なことを言っていいのかと疑問も感じた。 でも、お爺さんに嫌な想いをさせたわけじゃないし、いいか……。 僕は青馬の隣に並んだ。 「どんなことでもいいんですが、親切なことが出来れば」僕は青馬に合わせた。お爺さんは新聞を横に置くと、僕たち二人を順番に見た。 「そうかいそうかい、N小学校の……。親切なことねぇ。それじゃ、私の肩を叩いてくれたらとても嬉しいねぇ。いつも新聞をじっくり読むもんだから肩が凝っちゃって」お爺さんは右手で左の肩をさすった。 お爺さんは肩を叩いて欲しかったのか。 新聞を読む姿を見れば、確かに肩を叩くことは想像できたかも。 「じゃぁ、すみません。肩を叩きますね」青馬はお爺さんの後ろに回って肩を叩き始めた。 お爺さんの一番喜ぶことは肩を叩くことだった。
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