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「で? 千恵ちゃんの寝かしつけサボッてなにをそんなに深く考え込んでいたのかな?」
呼応するように、「あう」と千恵が鳴いた。なんとなく寝かしつけは秋穂がやるものだと思っていた知宏は、「ああ、うん」と続いてやる気のない相槌を打った。いずれ職場に完全復帰するつもりでいる秋穂は、ワンオペ育児には陥らないという並々ならぬ決意を固めている。いまから千恵と一緒に知宏のことも躾ようとしているのだ。
秋穂には悪いが、知宏とて遊んで帰ってくるわけではない。お疲れ様はお互い様じゃないのか。
決まった。同窓会に行く。
「同窓会の知らせが来てたんだ。中学校の」
「私来てないよ?」
「うん。3年1組限定。秋穂は3組だっただろ」
休憩時間になるとはお互いの教室を行き来していたことを思い出す。いまの知宏に10分の休憩時間があれば、絶対に席から離れない。
ふーん、と秋穂は一応納得したが、面白がってはいなかった。仲間外れにされたと思っている。
「ねえ、私も行っていい? 夫婦なんだし、いいでしょ? 五十鈴くんやナベちゃんにも会いたいしさ」
「そんな仲良くなかったじゃないかよ」
ここぞとばかりに知宏のクラスメイトの名前を列挙する秋穂のしつこさに、呆れた。
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