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しおりさんの視線を辿ってようやく私は私の異変に気が付いた。
「おめでとうございます!──あぁ、早速旦那様にお知らせしなくては」
「……」
真っ白な寝間着の下の方が赤く濡れていた。
「これでもう美織さまは大人の女性の仲間入りですわ」
「…あの」
「あぁ、怖がることはありません。大人の体になった喜ばしい出来事なのですよ。これで美織さまは旦那様の赤ちゃんを生めるのですから」
「……」
(赤ちゃん?まだ…子どもの私が?)
しおりさんの言葉はいまいちピンと来なかった。ただその時私が感じていたのはただひとつ。
(…お腹、痛い)
──私は美織、11歳。
私の知る世界にはたったふたりしか存在していなかった。
ひとりはお世話係のしおりさん。そしてもうひとりは──
「初潮を迎えたそうだな」
「…はい」
「具合は?平気なのか」
「…少し、お腹が痛いくらいで」
「そうか。あまり無理はしないように」
「…はい」
広いダイニングルームで朝食を摂っているのは私と、この広い屋敷の持ち主の旦那様だけ。
そう、この旦那様と呼ばれる歳上の男の人としおりさんだけが私の世界に存在する人だった。
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