第一章 箱庭の少女

3/10
前へ
/115ページ
次へ
お世話係のしおりさんから訊いた話ではこの旦那様という人は不動産王という肩書を持つとてもお金持ちの資産家だという事。 28歳の旦那様には家族と呼ばれる人が誰ひとりいなかった。ただ唯一、婚約者という肩書の娘がひとりだけが存在していた。 その婚約者というのが何故か17も歳の離れた私だということ。勿論正式に結婚していないのでまだ家族ではない。 だけど幼い頃から私はしおりさんから幾度となく言い訊かされて来た。 『美織さまはいずれ旦那様の妻となられて旦那様のお子を生んで家族を作って行くのですよ』と。 だけどどうして私は旦那様の婚約者なんだろう?と、そんな事を考えたのは一度や二度ではない。でもその疑問に答えてくれる人は誰もいなかった。 だって物心ついた時から私の傍にいたのはしおりさんと旦那様だけだったから。
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1443人が本棚に入れています
本棚に追加