第四章 無自覚な魔性

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『君の人生は君のものだよ、誰かが決めて束縛していいものじゃない!』 『…あの…先生が何をいっているのか私には解らないのですが…私は幸せですよ?』 『……』 『こんなに心地のいい環境にいて愛する旦那様に可愛がられて…ここで旦那様に愛される人生を私はこの上なく幸せだと思っています』 今思う素直な気持ちを先生に伝えた。だけど先生は何故かとても哀しそうな顔をして、そして吐き出すように呟いた。 『君は…まるで檻の中に閉じ込められている世間知らずのお姫様だ』 『!』 私の中で【檻】という言葉はとても嫌な言葉だった。 昔読んだ本にも幾つか出て来た言葉。その意味を知った時、とても嫌な言葉だとインプットされていた。 『僕は諦めない。君が幸せになれる道はひとつじゃないんだってことを示唆し続けて行く』 『……』 捨て台詞のようにいわれた先生の言葉に急に恐ろしさが込み上げて来た。 (先生は私を不幸にしようとしている──?) そんな気持ちが沸々と湧き出して来て今まで築き上げて来た先生との信頼関係が一気に崩れた気がしたのだった──。
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