第四章 無自覚な魔性

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だけど旦那様は最後まではしなかった。 回数を重ねる毎に知ったその行為の最終的に行きつく先がなんなのかも知った私は、どうして旦那様がその最後の一線を越えないのかが不思議だった。 ただ旦那様は『おまえを大切にしたいからだ』というばかりで私たちは未だに本当の意味で繋がった事は一度もなかった。 (昼間の…私に対する先生の態度って……) 一瞬の内に蘇る昼間の先生との事。 掌を握られ、そのままグッと力強く引かれた。その時の先生の目は私を求める旦那様と同じ目をしていた。 少し潤んだ熱っぽい目。それを見た瞬間、先生は私を欲しがっているのだと解ってしまった。 先生の顔が間近に迫った瞬間、部屋のドアが叩かれしおりさんがお茶を持って来てくれた。 素早く私から距離を取った先生にホッとしたと同時に何ともいえない虚無感が私の胸に居座り、どうにも平静ではいられなかった。 ──あの瞬間、私の中の何かが変わってしまうような怖さが芽生えてしまったのだ
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