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「私は…勉強を見ていただく分には先生の事を好ましいと思っています。でも…でも最近の先生は…私に生徒としての気持ち以上のものを持っているように思えて仕方がないんです」
「逸人がおまえの事を好いているとでもいうのか?」
「本当はどうかは分かりません。ただの自惚れかも知れません。でも…でももうこれ以上先生と一緒にいると私は……私が信じて来た大きなものを失いそうで怖いんです」
「……」
私は包み隠さず旦那様に話した。今までの平穏で幸せな日々を決して無くしたくなかったから。
だから早く本当の意味で旦那様のものになりたいと思った。
「お願いです…私を旦那様のものに…本当の意味での妻に…」
「──本当におまえは俺の理想の女になったな」
「…え」
黙って私の話を訊いていた旦那様は怒るどころか少し表情を和らげて私をギュッと抱きしめた。
「おまえの傍に逸人を置けばいずれ逸人はおまえの魅力に憑りつかれるだろうとは思っていた。それでも逸人をおまえの傍に置き続けたのはおまえを試していたところがあった」
「どういうことですか」
「すぐ傍に好いた女がいれば手を出したくなるというのが男の性。逸人がおまえに対して何かしらの接触を仕掛けたその時、おまえはどうするのか見ていた」
「見ていた…とは」
「俺が何も考えずに俺以外の男とおまえをふたりきりにすると思うか?当然勉強部屋にも監視カメラは仕掛けてある」
「!」
「逸人との時間がある時は常にそれをチェックしていた。そしておまえの取る態度を見ていた」
「…だ、旦那様」
(まさかそんな事になっていたとは…!)
私の行動の全ては旦那様に筒抜けだった。
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