第四章 無自覚な魔性

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急に体がカタカタと震え出して来た。 「どうした、美織」 「わ、わた…し…何か…粗相を…」 「……」 「旦那様を裏切るような粗相を何か…していたのでしょうか」 自分では気が付かないおかしな行動をしていたのではないかと怖くなった。それによってもし旦那様に嫌われたらと思ったらこれ以上に怖い事はないと思った。 だから旦那様から訊かされた話に体の震えが止まらなかった。だけどそんな私の体を旦那様は優しく抱きしめてくれた。 「!」 「そう怯えるな。言ったではないか、おまえは俺の理想の女になったと」 「…え」 「おまえは俺を裏切る行為を何ひとつしなかった。それに逸人との事を包み隠さず俺に話したではないか」 「だ、旦那様…」 優しげな視線で私を見つめながら流れていた涙をそっと拭き取ってくれる旦那様の指先に胸が高鳴った。 「本当はおまえが欲しくて堪らなかった。だけどせめて婚姻するまではとおまえに対して施す無体な行為の代償として自分自身の戒めとして我慢して来た」 「……」 「だがおまえが心から俺を求めてくれるならば…そこまで俺を想ってくれるならば」 「もう…ずっとずっと好きです!愛しています!私は旦那様しか愛することが出来ません!」 「…美織」 「だから旦那様、私を愛してください。この体も心も全てを旦那様で満たしてください!」 「──途轍もない殺し文句だな」 「え」 旦那様が一瞬目を細め妖艶な笑みを浮かべたと思った瞬間、私の唇は塞がれていた。
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