02・そして始まる

2/6
前へ
/16ページ
次へ
 さてさて、こんにちは!  前々世はマフィアの跡取り息子にして、前世はミシェル・エリーズという公爵家の一人娘だったこの俺は今世では名前のない……いわゆる“モブ”として孤児院でお世話になっている男の子だ。  顔立ちはなぜか前世のミシェルにそっくり……なぜ?  と、ともかく昨日まで平和にモブとして生きていたのに今日は朝から孤児院のおばちゃんから「あなたの親になる人のところに行こうねー」と言われ、豪華な馬車に乗ったのが今世の運のつき。  あれよこれよのうちにこれまた豪華(ただし、前世の記憶の中にあるミシェルの家にそっくり)な屋敷に連れ込まれ、風呂に入れられ、かわいいドレスを有無を言わさない顔のメイドに着せられて。  そして現在、屋敷の広間らしき場所にいる。  周りにはさっきドレスを着せてきたメイドが2人、老執事が1人。  さらには前世で父親と母親だった2人が並んで俺の前に立っていた。  まさかとは思ったが、どうやら俺はまたあのクソみたいなゲームの世界に転生してしまったよう。  ただし、時間が経っているどころか戻っているみたいで、父の白髪が多かった髪は黒く艶やかになっているし、母のシワの多かった顔も今ではツルツルだ。  ―――ならば、これはどういうタイプの転生だろうか。  前世はショックにより記憶が戻る系の転生だった。  ただ、今回はこの世界に産まれた時から前々世と前世のこともきちんと覚えている。  それなら、これはいわゆる一度死んで同じ人生を新しくやり直し、チートを使って世界の権力者的な存在に駆け上がっていくタイプの転生か?  ……現実逃避をしても結果は変わらない。  俺がミシェルそっくりで、さらにはドレスを着せられた影響で本人にしか見えなくなっていたとしても、さらには目の前には前世の父と母がいたとしても……この状況をどうにかしない限り、話が始まらないのだから。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

77人が本棚に入れています
本棚に追加