あと三日

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「え~っと? この黒イモリの粉末が十グラムに、乾燥させた吸血蝙蝠の羽……え? これこのまま使うのか?」  使い古された手帳を睨み付け、一人の青年が焚き火の前で胡座を掻き、銃器の代わりに怪しげな素材を闇市の如く並べ立てていた。  集団から少し離れた位置に座る青年の隣には、メイドの格好をした赤髪の美少女が腰掛けている。  美少女は眼鏡を持ち上げ、翡翠色の半眼で青年から手帳を奪い取った。 「やれやれ、マスターよ。吸血蝙蝠の羽は沸騰させた湯に浸け、抽出した上澄みの液体を使用せよと、書いて有るが?」 「え? ……って、ああ。書いてあったわ次の頁に。いや、コレ書き方悪いだろ。まだ余白有るんだからさ、その下に一気に書いてくれよな」 「フン、お前の絶望的なまでに底レベルな観察力の問題じゃ。よくもまぁ、今まで死なずに来れたモノじゃ」  赤髪の少女が呆れ半分に青年の肩を数回突っ付いた。  聞き耳を立てている限りでは、現段階で全く必要の無い話を展開している。  流石に作戦時刻が近付いてきたので、班長達だけではなく、他の人間達からも数奇な目で見られていた。  戦場にメイドを連れ込んでいる事に嫌悪感を抱く者も少なくはない。  見兼ねたように、班長の一人であり、この作戦の立案者でもある女性が動く。 「あ、あの、ちょっと良いでしょうか?」 「ん?」  女性が話し掛けると、青年が使い込んだ小さな鍋を火に掛けながら振り返る。 「好奇心からお尋ねするのですけど……あの、フィンさん? さっきから一体何をなさっているのですか?」
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