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女性は引き攣った苦笑いを浮かべながらも尋ねた。
コチラから依頼してワザワザ戦場に呼んだ事も有り、一応の礼儀を払ったつもりである。
「ああ、コレな。──健康法だ」
「はい?」
健康法。
予想だにしない回答に女性は呆気に取られた。
「この手帳の通りに煎じて飲めば、寿命が伸びるんだとさ」
「あの、でも……」
「まあ気持ちは分かるよ、依頼主のレーナさん。俺だって自覚は有るんだ、コレで寿命が伸びたら苦労しないよな~って。あくまでも健康法だって事は肝に命じている、心配はいらない。少し臭うかも知れないけどな」
「いや、そうじゃなくてですね」
「お~~い、マスター。沸騰しとるぞ?」
「おっと。シルビア、羽入れてくれ」
「断る。知らぬ。自分でやれ」
「お、お前なぁ……」
もしかしたら戦場で必要になる薬か、屍人に有効な毒の類いを調合しているのかも知れない。
そんな一縷の望みさえ易々と砕いてくれる、自己の利を追求している場違いな二人。
(ああ、寄りにもよって、こんな役立たずが来るだなんて……)
青年……フィンの依頼主であるレーナは、酷く疲れた様子でその場を後にする。
魔法が衰退し、荒廃の一途を辿る世界。
今は極限られた人間にしか扱う事の出来ない魔法は古の秘術とされ、新政府の手によって厳重に管理された。
だが。
かつての栄光を復活させる動きは後を絶たず、邪悪な神との契約によって魔法を発現させる禁忌の術が邪教徒の手によって世の中に出回ると、人々は喜んでそれを行使した。
人の命を糧に富をもたらす、邪悪なる儀式術。
邪教の名に相応しく、それは命を絞り取られた人々を屍人に変え、瞬く間に世界を死で溢れさせた。
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