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「で、どう思うマスター? 今回の依頼」
「屍人が度々街に現れ、人間を襲う。んで、その出所があの古城。一際デカイ化け物がそれを率いていたとなると……決まりだろ」
「『骸神』じゃな?」
「ああ」
「ンフフ。もし、今回も違っておれば、マスター……お前とは短い付き合いじゃったの」
「そうならない事を、今回も祈っとくさ」
フィンは口の端に笑みを浮かべ、鍋を火から離した。
そして、手帳の分量通りに上澄みの液体をスプーンで掬い、二杯。
これまた使い込んだコップに入れ、そこに粉末を入れて掻き混ぜ、更に水を加えて混ぜる。
解き放たれた鼻を突くような酷い悪臭に、周囲の人間が振り返った。
「フム。臭いという点では、昨晩の干しミミズと大蜘蛛の卵に匹敵し、尚且つ、二日前のムカデと生魚と水苔を凌駕しておるな」
少し離れた位置から見守っていた美少女……シルビアが、呆れた様子で自らの髪を掻き流した。
「毎度の事じゃが、マスター殿の下手物好きには驚かされる」
「いやいや! 俺は別に下手物好きってワケじゃねぇから。健康の為にやってるだけだからな!? 無理してやってんだからな!?」
フィンはコップを片手で持ち上げ、シルビアに反論する。
出来上がったばかりで生暖かい、コップの中を満たす液体。
ソレは、良く言って腐った液体、悪く言うとこの世の混沌が溶け込んだ毒々しい死の腐敗液だった。
恐る恐る口を付け、フィンは一気に飲み干した。
「アイツ、飲んだぞ!?」とフィンの行動を見ていた周囲の人間達から響きが起こった。
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