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「はぁ……何やってるのかしら」
遠巻きにフィンの様子を見ていたレーナは、盛大に溜め息を吐いて額を押さえる。
「本当に政府の人間なのか、アイツは?」
「多分、ね。それとも新政府は、私達のような辺境の領主達の依頼には、真面目に答えないのかしら」
レーナが、同じ班長の男に軽く愚痴る。
この集団の班長達は、屍人の被害に苦しむ近隣の領主達である。
装備も戦える人員も、自分達が先頭に立つ事でどうにか揃え、屍人との戦いに精通した部署もある新政府にも前金を支払い、助っ人として雇った。
「ふん。あんな奴を寄越す時点で、政府は宛にならん」
男はレーナにそう言うと、自分の班に戻っていった。
この集団の戦力はたかが知れている
それまで銃を握った事も無かった辺境の領主達に、自衛の兵を加えて作った寄せ集めだ。
「それでも、皆の為にやらなくちゃ……」
レーナは拳を握り、一人り俯いて呟く。
出発の時、街人達が期待の眼差しを向けてくれていた事を思い出した。
それに答える為にも、もう後戻りは出来ない。
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