第4章(過去編)

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第4章(過去編)

「こら千尋、焦らずゆっくり降りなさい。」 「はい、おとうさま。」 父の手は大きく、ふわりと千尋の頭を包む。千尋は父の方を振り返り、父の前に右手を差し出した。 馬車から降りれば、空は晴天。涼風に:秋桜(コスモス)が凪いでいる。外は少しだけ肌寒く、握り返された手のひらがじんわりと温かい。 「千尋は英語が上手だと先生が褒めていたぞ。最近勉学は楽しいか?」 「はい!じぶんのせかいがひろがるみたいで、学べば学ぶほどふかくはまっていくのです。」 「そうかー。まだ9つなのにもう学びの楽しさを知ったのか!きっとαだ。将来お前負けないように、私も頑張らないとな。」 父の言葉が嬉しくて、千尋はくしゃりと顔を緩ませる。あるふぁ、というのがなにかはよくわからなくても、父に褒められていることには変わりない。 「今日は千尋にプレゼントがあるんだ。」 「ぷれぜんと?」 「そう。あそこの建物に準備してあるよ。」 そう言って、千尋の父は少し先にある大きな建物を指差した。 「:冷泉(れいぜい)のおやしきに?」 あそこは、千尋の家と同じくらい有名な家柄のお屋敷だ。そんなところにプレゼントが?と千尋は父を見て首をかしげる。 「ああ。」 父がにっこりと笑う。 父からの贈り物。考えただけでわくわくして、千尋は心を躍らせたのだった。
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