55人が本棚に入れています
本棚に追加
/148ページ
Scene 1.
「あっ、お姉ちゃん!」
あたしは優希ちゃんに「ばいばい!」と手を振って駆け出す。
「お姉ちゃん!颯くん!」
仲良く歩いている二人の間に、割って入り込む。
「あれっ、杏ちゃん今帰り?」
颯くんはあたしを見下ろして爽やかに微笑む。
「うん!優希ちゃんと図書館で勉強してたんだ~
そろそろお姉ちゃんたちが帰ってくるころかなって」
あたしは大好きな颯くんとお姉ちゃんの腕に両腕でぎゅっとしがみつく。
「さては、私と颯に何かおごらせる気ね?」
お姉ちゃんは笑って、あたしがしがみついてる腕と反対の手を伸ばし、あたしのおでこをツンとつつく。
「ふふふ、当たりっ!
杏ちゃんはドーナツが食べたいのさ♡」
あたしが嬉しくなって言うと、呆れたようにお姉ちゃんはため息をつく。
「また夕飯食べられなくなってお母さんに叱られるよ」
「今日、颯がうちでご飯食べるって言うから、ドーナツ買って帰って、家で食べよう」
諭すように言いながらお姉ちゃんはあたしの腕から手を外して、あたしの頭を撫でる。
「えっホントっ??颯くんうちに寄るの?久しぶりだね!」
あたしは嬉しくて、颯くんの腕にぶら下がる。
「杏ちゃんの受験が終わるまでは、お邪魔したら悪いかなぁと思ってたんだけどね…」
颯くんは申し訳なさそうに言い、お姉ちゃんが「大丈夫よ、今更」と笑う。
「今日、颯んちのおじさんとおばさん、それぞれ仕事上の用事があって遅くなるんだって。
それをお母さんにLINEしたら、お母さんが都合よくおかずをいっぱい作り過ぎちゃった、と」
「ああ、昔からよくあるパターンだね」とあたしも笑った。
最初のコメントを投稿しよう!