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内緒
妻の入浴中、俺は遼の部屋へ押し入った。
「鼻血で早退は大袈裟だろ」
「ノックぐらいしてよ」
隠れてゲームでもしてるんじゃないかと思ったが、杞憂だった。
いや、俺が来ることには勘付いていたのだ。遼はこちらを向かない。
「父さんこそ、全然ウインク上達しないね」
「うるせえ」
ウインクは、俺と遼の間だけの合図だ。
意味は、『お母さんには内緒』。
机に向かっている遼の横顔が見えるように、俺はベッドの上に腰を下ろした。部屋の中をぐるっと見渡しながら、一拍分の時の経過を見送る。
「お前、桑の川原に行ってたな」
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