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シミの正体には、匂いを嗅いだときに気付いた。よく見ると、スボンの白いラインに付いていた赤いシミは少々紫がかっていた。
熟し切る前の果汁は血のように真っ赤だが、空気に晒すとだんだん黒紫になる。シミの大部分は青い生地に馴染んでいたから、一見血に見えても仕方なかった。
あの川原に桑の木があることを、妻は知らない。
「別に行っちゃダメなことはないんだ。ただ、お前が一人で悩んでるなら、約束が違う」
遼の顔が一瞬くしゃっとなったから泣き出すのかと思ったが、堪えたようだ。
本当に、大きくなったんだな。
あの川原は、瞳が命を落とした場所だ。
瞳が死んだとき、遼と約束したのだ。
母ちゃんが死んだことで自分を責めないこと。悩んだり悲しんだりするときは、父さんとお母さんもまぜること。
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