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いくら仲が良かったからって、赤の他人が急に親子になれるわけがない。でも二人は努力している。俺には、変に気を遣い合っているように見えてしまうわけだが。
さっきみたいに、加奈子は小学校での遼の様子を非常に気にしているが、本人に聞くことはしない。
遼は遼で、加奈子に対してありがとうやごめんなさいを頻繁に言うようになった。それはもちろんいいことなのだが、聞いていてむず痒くなるほど言葉が声に馴染んでいない。それに、加奈子の前では裸になりたがらない。
こんなに悩んで辛そうにしているのに、加奈子に心配かけまいと大袈裟に笑う。
「まだ慣れないっていうのもあるんだけど……母ちゃんをあそこに、置いてけぼりにしちゃう気がするんだ」
遼はそこで、初めて涙を零した。
俺は遼の頭を撫でた。
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