内緒

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 あの日。  休日だったが、俺は出張で家を空けていた。遼と瞳はいつものように川釣りをしに、桑の川原へ行った。  いつも穏やかだった川は、前日に激しく降った雨のせいで増水し、流れは早かった。危ないからと瞳は遼を連れて帰ろうとしたが、翌日家に友達が遊びに来るから、アユを釣って見せたいんだと言って聞かなかったそうだ。  アユが竿を引っ張ったとき、遼は滑って川にさらわれた。瞳は咄嗟に遼を掴んだが、そのまま川に飲まれ、遼と繋がった腕と反対の手でかろうじて岩を掴んだ。  運良く近くを通りかかった年配の男性に、遼は助けられた。男性一人では一人ずつを引き上げるのが精一杯だったことに加え、瞳が遼を先にと懇願したのだ。しかし、力尽きた瞳は、遼が助けようとしたときにはいなかった。 「母ちゃんはいつも、お前のそばにいる。お前が信じてあげればな」 「でも、母ちゃんのこと考えてるの、やっぱり、加奈子ちゃんに悪いかなあ……せっかく、お母さんになってくれたのに」
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