内緒

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「深く考えなくていい。お前には、お前を大切に思ってくれている母親が二人いる。それだけのことだ」 「仁志さーん、お風呂ー。遼くん宿題してるんだから、邪魔しちゃダメよー」  遼は涙を拭いた。  俺は遼の鼻を掴んで振ってやった。  遼はくすぐったいよう笑った。 「加奈子ちゃんのこと、早くお母さんって、呼べるようにならなきゃだね」 「焦る必要はない。ただ、何かを変えるには、非日常的な何かがあれば十分だ」 「旅行、楽しみだなあ」 「なあ、できれば、気球はやめてやってくれないか。お母さん、ああ言ってたけど、実は高所恐怖症なんだ」 「そうなの?」  遼は妻の声がしたドアのほうを一瞥すると、含み笑いをした。  お互いに気を遣っていたのが、急に馬鹿らしくなった様子だった。
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