事件

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 赤、赤、赤……赤いものを連想する。 「やっぱり怪我なんかしてなかったぞ」 「もうっ、こうやって話してることがバレちゃうじゃない」  俺はさっきまで座っていたローソファに身を預けた。再びレジャー雑誌をパラパラと眺める。 「でも見たでしょ? 赤いシミ」 「ああ。右の尻のあたりにべったり。あれだ、絵の具だ」 「えー絵の具ー? 絵の具って服についたら固まるでしょ? あんなシミにはならないわよ」 「水彩だよ」 「まあ、それならありえるかも。でも待って、右のお尻のあたりに付くのって変じゃない? もし絵の具だとしたら、後ろからわざと付けられたのよ!」 「なんでいじめられてる方向に持っていくんだよ」 「あ、でも遼くん、今日は絵の具持って行ってなかったわ」 「じゃあ鼻血だ、鼻血。そもそもあれが血だったら相当な怪我だ。自分の怪我であれ他人の怪我であれ、少なくとも学校から連絡が来るだろう。でも、鼻血だったらそこまで大ごとじゃない」 「確かに。けど、自分の鼻血がお尻につく?」 「友達のだろう。ただお前が心配するように遼がいじめられていて、友達に歯向かって怪我をさせたんだとしたら、血は背後には付かない。じゃれてたか、体育の時間に遼のお尻に突っ込んできた友達が、鼻を強打して血を出したんだ」 「そういえば、体操着持って行ってた」 「はい、じゃあ鼻血で決定。早く旅行決めようぜ」 「本当に大丈夫かしら」 「そんなに気になるなら本人に()いてみればいいだろ」  ちょうど、風呂のドアが開く音がした。
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