6人が本棚に入れています
本棚に追加
赤、赤、赤……赤いものを連想する。
「やっぱり怪我なんかしてなかったぞ」
「もうっ、こうやって話してることがバレちゃうじゃない」
俺はさっきまで座っていたローソファに身を預けた。再びレジャー雑誌をパラパラと眺める。
「でも見たでしょ? 赤いシミ」
「ああ。右の尻のあたりにべったり。あれだ、絵の具だ」
「えー絵の具ー? 絵の具って服についたら固まるでしょ? あんなシミにはならないわよ」
「水彩だよ」
「まあ、それならありえるかも。でも待って、右のお尻のあたりに付くのって変じゃない? もし絵の具だとしたら、後ろからわざと付けられたのよ!」
「なんでいじめられてる方向に持っていくんだよ」
「あ、でも遼くん、今日は絵の具持って行ってなかったわ」
「じゃあ鼻血だ、鼻血。そもそもあれが血だったら相当な怪我だ。自分の怪我であれ他人の怪我であれ、少なくとも学校から連絡が来るだろう。でも、鼻血だったらそこまで大ごとじゃない」
「確かに。けど、自分の鼻血がお尻につく?」
「友達のだろう。ただお前が心配するように遼がいじめられていて、友達に歯向かって怪我をさせたんだとしたら、血は背後には付かない。じゃれてたか、体育の時間に遼のお尻に突っ込んできた友達が、鼻を強打して血を出したんだ」
「そういえば、体操着持って行ってた」
「はい、じゃあ鼻血で決定。早く旅行決めようぜ」
「本当に大丈夫かしら」
「そんなに気になるなら本人に訊いてみればいいだろ」
ちょうど、風呂のドアが開く音がした。
最初のコメントを投稿しよう!