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行燈ひとつの薄暗とはいえ、菊の座を晒すのは決まりが悪い。
人肌に温められた丁子油がたっぷりと染み込んだ筆が、露わになった孔をくすぐる。大山の指南では無かった刺激に絢鷹は身悶えた。
まだ、誰かに抱かれるのはこれで二度目だ。
膝を折りうつ伏せて尻を丸出しにしている格好は間抜けなものだ。
だが、ほんのり漂う丁子油の香りは嫌いではない。
「ふっ……」
「どうした」
「いえ、心地よくて」
「そうか。心地よいか。では、これはどうだ」
薄く粘り気のある笑みを浮かべた相手の男は、自分の指を油壺に浸し絢鷹の孔にゆっくりと差し込む。
すでに咲き綻んでいた菊の座に、男の指はすんなりと埋まっていった。
男の、油にまみれた指が滑らかな動きで行き来する。じっくりと、指先に角度を付けながら抜き差しを繰り返され腰が震える。後の感覚だけで絢鷹の前もすっかり張りつめていた。
耐えがたい快感に力が抜け、へたり込んだ絢鷹は枕に顔を埋めた。――大山の手ほどきとは全然違う。
「……っ……」
(……善がっている場合じゃない……。話さなきゃ……)
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