かくのごとし 二

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 絢鷹(あやたか)一端(いっぱし)になって間もない若い(しのび)だ。  今宵は初の夜伽(よとぎ)の任務――床の手ほどきを受けて以来、二度目の色事だ。特別身持ちが固いわけではないのだが、あれ以来機会がなかった。ただそれだけだ。  世話役の辻里(つじり)と二人きりの任務もまた二度目。それがよりによって夜伽(よとぎ)とは――。絢鷹(あやたか)の心中は微かに波立っていた。  一度目の、二人での任務においては身を当てるのは辻里(つじり)の役目だった。今回は絢鷹(あやたか)がそれをやる。  あの時見た辻里(つじり)が女と激しく交わる姿は、いつ何時でも容易く絢鷹(あやたか)の欲情に訴えかける。あれから毎晩のようにそれを思い浮かべ、辻里(つじり)への想いを束の間だけ昇華させていた。  だれかと(むつ)()う姿など見られたくはないが、これは任務だ。こんなことで四の五の言っていられない。それ以上に、(しのび)として認められないことの方が辛い。  親代わりともいえる辻里(つじり)に思いを寄せてはいるものの、どうせ目の端にも入れてもらえぬことは分かっている。だからせめてもう子供ではない、一人前の(しのび)だと認めてもらうことが絢鷹(あやたか)にとっての恋の形だった。
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