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耳を押さえたままそんな事を考えてやり過ごしていたのに、相変わらず音を立てながらリンゴを食べる楓を、もう一度ジッと睨みつけた。
あまりにしつこいから今度は本当に睨んでやった。
くそぅ……わざとらしいにも程がある。俺が生のリンゴの音が嫌いなのをわかっているくせに。目の前で、なんなら耳元で、ニヤニヤしながら食いやがって。
「おまえ……後でわかってんだろうな?」
「へへ……何が?」
「だから!……」
シャクシャクシャク……
「うっ……ちょ、マジでやめろって!!!」
シャクシャク……ジャクッ!
「あー!ムリムリムリ……!!!」
さっきよりも大きな音を立てられて、堪えきれずに目をギュッと瞑り、口もギュッと閉じて、さっきよりも強く耳を押さえた。
何なんだよ!何でこんな嫌がらせ……
なんてそう思っていたのも束の間、ギュッと閉じていた唇に柔らかな感触を感じて、俺は思わず目を見開いた。
ギュッと固く瞑っていたから開けてすぐは黒い残像がチカチカしていて、やっとはっきり見えたと思ったら目の前には長い睫毛があって、サラリとした栗色の髪が頬を撫でていた。
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