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「好きだよ……リンゴ味も楓の事もハチミツも……全部……全部好きだ……。」
「ん?ハチミツってな……」
楓のハチミツを遮って今度は俺がリンゴに触れた。
甘酸っぱくて、柔らかい……
「うん、こっちのが美味いな……。」
「……おまえ。」
「おまえじゃないだろ?」
「くそっ……真似すんなよ……。」
楓は小さな声でそう言って、頬を真っ赤に染めながら恥ずかしそうに片手で口元を覆った。
手に握られていたはずのリンゴはいつの間にか床にコロンと転がっていた。
かじった跡がハートに見えるのは目をギュッと瞑り過ぎていたからだろうか。
「もう一回、リンゴ味くれ……。」
「リンゴ味は楓だろ?」
「どっちでもいいよ。もう何でもいい……。」
「だったら最初からそう言えよ。」
俺はギュッと楓を抱き締めた。
楓もギュッと俺を抱き締め返した。
もう混じり合っちゃうんじゃないかってくらいに、俺たちは抱き締め合った。
栗色の髪がまた頬を優しく撫でて、さっきよりも真っ赤に熟れたリンゴが俺の唇に触れる。
甘くとろけたハチミツが甘酸っぱいリンゴと合わさって、
それはもう……
それはもう……とてつもなく……
「美味い……」
思わず溢れでた言葉に楓が笑う。俺は目の前に見える八重歯を見つめた後で楓に視線を移す。笑っている楓と視線を合わせて、汗ばむ手で肩を掴んで、
そうしてもう一度触れ合って……
何度も何度も触れ合って……
2人してリンゴみたいな顔をして、何度も繰り返されるキスの合間を縫って、ハチミツみたいな甘い声で言葉を交わした。
「好きだ」って何度も。
何度でも聞きたいって楓が言うから。
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