恋じゃなくても、愛じゃなくても。

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白い息を吐きながら、男と女の定義って何なのだろうなって考える。ペニスがついていたら男?胸が膨らんでいたら女?声が低かったら男?髪が長かったら女?だったら、ペニスはついていない、胸はある、けれど男でも女でもないボクは一体何者なんだろう。 腕時計に視線を落とすと短針がちょうど7を指している。そろそろだな、と思った時、視界に人影が現れた。昼間の図書館で見た白いスカートが月明かりの下で揺れている。 ボクは短くなった煙草をギリギリまで吸うと灰皿に押し付けた。買ったばかりのハイライトの箱を握り潰しジーンズのポケットに突っ込む。 美絵ちゃんはボクのもとへ駆け寄ると腕にしがみついた。甘い香りが一瞬鼻をかすめる。彼女はいつもムスクの香水をつけている。今すぐにでも抱きしめたい衝動を堪え、注意深く辺りを見渡した。冷え切った夜の公園には人影はなく、隣接されている大学の校舎から漏れる明かりだけが見えた。
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