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そんなやりとりが耳に入っているのか、いないのか。
庭先にしゃがんでいる繭は、霊体のシロのために犬小屋を設置してやっていた。
自分で作るんじゃなくて、小洒落た小屋を買ってくる辺りが、繭らしいが……。
ふと、ミワが静かになったな、と気づく。
彼女は、黙って、そんな繭を見ていた。
心地の良い風が吹いていたが。
その風に、ほとりの髪は揺れているが、ミワの髪は揺れていない。
此処でこうしている限り、ミワには、吹き付ける風も土の匂いも感じられないし。
大好きな繭に触れることすらできない。
ほとりは、この間、死人のように、座敷に倒れていたミワを思い出していた。
ミワはそろそろ生まれ変わりたくなっているのではないだろうか。
そう思っていたが、黙って繭を見つめるミワを見ていると、なんだか寂しくなり、
「ねえ、もうちょっと此処に居てもいいんだよ」
と言ってしまう。
赤くなったミワに、
「なに言ってんの」
と言われ、環には、
「……成仏させたいんじゃなかったのか」
と言われてしまったが――。
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