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3.メガロヴルグ王国王太子・エセルバルド そして カロラング・アンティオ王国前王太女・エレオノーレ
二人は早々にカロラング・アンティオ王国を辞して、急いで今度はメガロヴルグ王国へ向かった。
二人の驚いたことには、カロラング・アンティオ王国の王妃がエレオノーレの結婚を祝って、たくさんのドレスや宝石、そしてこまごました嫁入りに必要なものなどを揃えてアンナと共にメガロヴルグへ送ってくれた。
「仮にもカロラング・アンティオ王国の第一王女が他国へ嫁ぐんだから、お母様としては国の体面にかけて身一つで追い出すわけにはいかなかったんでしょうけどね」
エレオノーレは少し自嘲気味に言う。
エセルバルドは笑って「それでも、女親にしか判らないものもあるだろ。有難く受け取っておこう」とエレオノーレの髪を愛しげに撫でた。
二人はメガロヴルグ王国で大歓待を受け、凱旋した将軍のように迎えられた。
出迎えたオーウェンは恭しくお辞儀をして顔を上げるとため息をつく。
「最初からこうなるような気はしておりましたよ。
ともあれ、ようこそメガロヴルグ王国へ。エレオノーレ王太子妃様。
願わくは、この暴れ馬みたいな王太子の手綱を上手に操ってくださらんことを」
マキアベルリは茶目っ気のある笑顔で「ご無事で何よりでございます。お二人のお話は後ほど、微に入り細を穿ってお聞かせいただきますよ」と楽しげに言った。
エセルバルドから母后との不仲を聞いていたエレオノーレは、謁見すらしてもらえないことを覚悟していたのだが、案に相違して王妃はエレオノーレを温かく迎えてくれた。
「オズワルドがいなくなってしまって、娘たちも皆、どこかへ嫁いでいく身だし…母親なんて寂しいものね。
エレオノーレが来てくれて嬉しいわ。
聞くところによると、ずいぶん、勇敢っていうか…我が国の精鋭部隊を一人で率いて戦おうとしていたって」
エレオノーレは思わず赤くなり、扇子で顔を隠す。
「…さようでございますわ…お恥ずかしいです。忠実な家臣が止めてくれたので、未遂に終わったのでございますけど」
「ああ、クライスト副将軍ね。
有能な家臣だったようで、残念でしたわね」
えっ?とエレオノーレは顔を上げる。
ずいぶん詳しいなあ…?
隣で聞いていたエセルバルドが噴き出す。
「母上は、意外にこういう話がお好きなんだ。
戦好きの父上に感化されたってご本人は仰っているけど、もともと冒険譚のような話を好まれる方なんだよ」
「母上、私も今回の戦で、たくさんのお話を持ち帰りましたよ。
マートンと一緒に、マキアベルリも交えてお聞かせ申し上げましょう。
母上に似た、気の強い娘が好きなようです、私は」
エセルバルドはエレオノーレにぱちんと片目をつむってみせた。
マザコンか。
エレオノーレは心の中で突っ込む。
まあいいか、エセルバルドとお義母様が仲良くなれるなら。
それが一番だよね。
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