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おいおい、目が笑ってねえぞ。
あたしは心の中でツッコむ。
どうやら、王太子の本質はあたしに向けられた厄介な皮肉屋の方のようだわね。
「エレオノーレ姫、申し訳ありません。
兄上は、いつもはあんな物言いをなさる方ではないのですが…
ご気分を害されましたか」
と、あたしにずいぶん近づいてきたオズワルド王子があたしの顔を覗き込むようにして言う。
あたしは小さく首を横に振り、オズワルド王子の綺麗な瞳を見つめながら答えた。
「王太子殿下も、オズワルド様がご結婚なさってこの国をお離れになることに、きっとお寂しかったりとか、お気になることがたくさんおありになるのでしょう。
わたくしは何も気には致しておりませんわ」
オズワルド王子は、ほーっと息をついてうつむく。
「私は、今日まで、カロラング・アンティオ王国に婿入りすることも、この国を離れることも嫌で嫌で仕方ありませんでした。
敬愛する兄上をお助けすることに繋がると思い、承諾しただけでしたから…。
しかし、今日、貴女にお会いして考えがまったく正反対になりました」
顔を上げて、あたしの左手を取り、指の先にそっとキスする。
「私は、貴女の夫になって貴女の国に行けることがとても楽しみになりました。
美しく聡明な貴女の傍にずっといたいと、思ったのです。
貴女と共に、これからの人生を歩んでいけることを嬉しく思います」
あたしは、男の人からこんなことを言われるのが初めてで、舞い上がるような恥ずかしいような気持ちを持て余す。
とりま、アンナに言われた通り、瞳を潤ませ「嬉しゅうございますわ…」と呟く。
オズワルド王子は、はにかんで目を伏せた。
王子の従者が持ってきてくれた、冷たい飲み物と食事を二人で摂る。
王子はなにくれとなくあたしに気を遣ってくれて、あたしは侍女以外の他人と二人で食事するなんて初めてだったけど、楽しく食事をすることができた。
なんか良さそうじゃん、この人。
優しくて思いやりありそうだし、自我が強くなくて御しやすそうだし。
とりあえずあれだな、第二王子をその気にさせて無理にでも我が国に引っ張ってこい、というお父様からのミッションは達成できたかな。
グッジョブ!あたし!
オズワルド王子が、エセルバルドみたいな性格悪いやつじゃなくって本当に良かった。
お兄様のエセルバルド評は間違ってるわ。
国民のことを一番に考える、頭が良くて気骨のある頼もしい男だよ、とおっしゃっていた。
そういえば、面倒くさがりで子どもみたいなところもあるけど、ともおっしゃってたな。
そこは…どうなんだろう。
このバカバカしいほど盛大な宴が終わって帰国した後も、王太女としてアイツと会う機会は増えるんだろうなぁ…
マジで憂鬱。
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