133人が本棚に入れています
本棚に追加
3.メガロヴルグ王国王太子・エセルバルド
「あーつっかれた…」
俺は呻いてソファに突っ伏す。
「お疲れ様でございました。
なかなかご立派なお振る舞いでいらっしゃいましたよ。
各国の姫君やご令嬢方も、エセル様の虜でございましたな」
小姓たちが俺に駆け寄り、長靴を脱がせたり、剣を身体から外したりしているのを見ながら、オーウェンが満足そうに言った。
けっ。いい気なもんだよまったく…
俺は聞こえるように舌打ちする。
「それで、いかがでございますか」
着替えを済ませて椅子にどかっと腰かけた俺に、ホットワインを差し出しながら、オーウェンは人払いして他に誰もいない部屋の中で声を潜める。
「なにが」俺はワインを口に含んで、素っ気なく訊く。
「王様もお気になさっていらっしゃいました。
王太子はどの王女をお気に入られたのかと」
どれもこれも最悪だよ。
俺はワインを飲み干すと、グラスをオーウェンに突き出す。
オーウェンはグラスを受け取り、俺の方へ身体を寄せ、耳元で囁く。
「シエルヴィナ姫は…いかがでございますか」
でた。
やっぱり父上や重臣たちの推しは、ジェノーバラ大公国辺りか。
俺はオーウェンの顔を見て、目を伏せた。
シエルヴィナ大公女か…まあ、歳も近いし、一番無難っちゃ無難だな。
顔はイマイチだが、身体つきはなかなかグラマラスだし。
だがあのバカっぷり…自分のことばかり話して、まともな会話になったことがない。
俺は思わずため息をつく。
ふと、今日初めて会った王女が脳裏をよぎる。
エレオノーレ…だったか。
俺が言った皮肉に対する、素早くて機転の利いた応酬。
頭の回転が速いんだな。
しかしあの嫌味たっぷりな所作に口の利き方…見かけ通りの可愛らしく清純な女じゃないな。
フェルディナンドの妹姫にしちゃ、やけにひねくれているじゃないか。
くくっと笑いを漏らす。
面白い、あの女。
「どなたか、お気に召した方がいらっしゃったのですか?」
オーウェンの、期待を込めた瞳が俺を凝視する。
「いや、まだだな。
あと2日あるんだろ、慌てることはないさ」
俺は大あくびをして「もう寝るぞ」と言って立ち上がり、寝所へ向かった。
明日と明後日、まだまだ楽しめそうだ。
久しぶりに気分が高揚する。
最初のコメントを投稿しよう!