第1章 花嫁選び・第一日目

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 「エセルバルド・グリウィズ・メガロヴルグ王太子殿下の御成り~」  俺は大きくため息をつくと、頭を上げ胸を張る。  柔らかな中にも傲岸不遜な笑みを顔に貼り付け、剣に左手を載せて大股に歩み、父王の玉座の後ろから前に出た。  広間が一際大きくざわめき、皆が俺に注視する。  うっわ…  俺は表情を変えずに密かに驚く。  凄い数の人だ。  このバカでかい広間に、入りきれないほど大勢の人がいる。  王宮自慢の楽団(オーケストラ)も、隅に追いやられて心なしわびしく見える。  玉座にゆったりと腰かけ、金の持ち手のついた眼鏡をかざして広間を見回していた父王は、俺を見上げると満足そうに頷いて立ち上がった。  広間のざわめきが一瞬にして収まる。    「本日は、王太子の為に遠方よりお越しいただいて、感謝する。  今宵から3日間の舞踏会の間に王太子と第二王子の花嫁を決め、皆に披露したいと願っている」  え…  俺は、後ろにいる第二王子のオズワルドを横目で見る。  オズワルドはその線の細い、まだあどけないような顔に緊張の色を浮かべている。  そうか、オズワルドもいよいよ政治に利用されるってわけか。  俺は自分の立場を棚に上げて、弟王子に同情する。
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