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1.メガロヴルグ王国王太子・エセルバルド
どうなってやがんだこいつは!
俺は報告書を力任せにテーブルに叩きつけた。
作戦という作戦がすべて裏目に出ている。
カロラング・アンティオ王国の軍は悉く敗退し、前線はじりじりと後退の一途を辿っている。
エレオノーレは、どうなってる。
オズワルドと共に、最前線にいるという連絡が来たきり、音沙汰がない。
エレオノーレ!
俺の焦燥感は募る。
「エセル様、モノに当たったって仕方ないでしょう」
オーウェンはあくまでも冷静に言う。
知的なブルーグレイの瞳を瞬かせる。
「オズワルド様とエレオノーレ様は、向こうの大将軍もご一緒に居られるそうですから、大丈夫でございますよ。
オズワルド様も、大将としての役目を懸命に果たしていらっしゃる」
俺はオーウェンの落ち着き払った態度にイライラしながらも、椅子にどっかり座って何とか落ち着こうと試みる。
「だけどこれ、非常にまずい展開だね。
完全にこちらの作戦が敵方に漏れている」
アルバートが地図と報告書を照合しながらひとりごちる。
「そうだ。
誰なんだ、情報漏洩しているのは!」
俺は椅子から身を起こし、オズワルドからの書簡を広げた。
この王宮から馬車を飛ばして国境に着き、さらに南下してザックス地方に到着してから1週間。
かなり早い段階で、オズワルドは軍内の違和感と裏切り者の存在を示唆していた。
俺は正直なところ、意外だった。
何の経験もないオズワルドに、戦争の勘みたいなものがあったのかと。
誰かに入れ知恵されているのかとも思ったが、初見の他国の王子に、そんなことを進言する奴もいないだろうしな…
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