第1章 花嫁選び・第一日目

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 「おい…あれ誰だ」  俺は令嬢を凝視し、小声でオーウェンに訊く。  贅沢で豪奢なドレス、高く盛りあげた髪の上で輝く宝石のティアラ、小づくりな体つきと優雅でたおやかな振舞い。  どこかの王女に違いない…のに、見たことがない。  「カロラング・アンティオ王国の次期女王、エレオノーレ王太女様でございます」  「フェルディナンドの妹姫か!」  俺は驚いて、旧友の名を口走る。    我がメガロヴルグ王国に比肩する大国で、殆ど隣国と言っていいカロラング・アンティオ王国の、次期女王だと?  そうか…王子はいなかったからな…フェルディナンドの他には王女ばかりだった。    王太子のフェルディナンドは幼いころからの友人で、気の良い優しい男だった。  1年前に突然、亡くなった。理由は判らない。  俺は、国内の政争に巻き込まれて、毒殺されたんじゃないかと思っている。  俺の驚きをよそに、オーウェンは淡々と言葉を続ける。  「オズワルド様のフィアンセでいらっしゃいます」    「へ?」俺は間抜けな声を出す。  「メガロヴルグとカロラング・アンティオが縁戚になるってことか?!」  これまで百年以上も守ってきた協定を破るって?  「左様でございますね。  まあ、カロラング・アンティオ王国も背に腹は代えられないということでございましょう。  ある意味、オズワルド様も人身御供のようなお立場で」  オーウェンは表情筋を一つも動かさず、しゃらっと語る。  はぁー…俺は思わず大きな息をついて、階下で踊る二人を見つめた。  何だよそれ…下手すれば世界の勢力地図が変わっちゃうじゃないか。
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