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オズワルドの下手なリードにもめげることなく、エレオノーレ姫は優雅にステップを踏み華麗にターンする。
上からでは表情はよく見えないが、楽しそうに微笑んでいるようだ。
あのフェルディナンドの妹姫ならば、さぞかし整った美しい顔立ちだろう。
オズワルドはその端正な顔を緊張でこわばらせ、優雅とはお世辞にも言えないようなダンスをしている。
が、宮廷画家の描いた絵画から抜け出してきたような、一対の美しい人形のような二人に、周りのギャラリーはうっとり見惚れている。
ふうん…
俺は会ったことのなかった、エレオノーレ姫に興味を持った。
どんな姫だろう。
「エレオノーレ王太女はダメでございますよ」
俺の心を見透かしたように、俺を見据えながらオーウェンは静かに言う。
俺はオーウェンの、ブルーグレイのガラス玉のような感情のこもらない瞳から目を逸らす。
「判ってるよ。
亡き親友の思い出話がしたいだけさ」
俺が大広間に降りていくと、周囲の人々がさっと道を開け、俺を広間の真ん中に押し出す。
「エレオノーレ姫、一曲お相手願えますか」
俺は片膝を折り右手を差し出し、不敵に見える笑顔で言う。
すると、エレオノーレ姫は今までの可愛らしい表情とは打って変わって尊大な笑いを浮かべ、白く繊細な手袋に包まれた細い左手を、差し出した俺の右手に載せた。
おおー…と周りの人々がさざめくようなため息を漏らす。
まあ、オズワルドよりは俺の方が、絵になるだろうな。
あらゆる面で俺の方が見栄えがする容姿だから。
俺は秘かに自負する。
俺がにこやかに左腕を上げ、他の人も踊りの輪を作るように促すと、わっとペアになった人たちが広間の真ん中に出てくる。
オズワルドも他の令嬢を踊りに誘っている。
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