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音楽が始まり、俺とエレオノーレ姫は優美にお辞儀して腕を組み、ステップを踏む。
思った通り、とても可憐で美しい王女だ。
フェルディナンドに面差しが似ている気もする。
細く華奢な身体に飾りたてられた重そうなドレスを纏っているにも拘らず、エレオノーレ姫のダンスは非常に軽やかに瀟洒で、体重すら感じさせない。
周りの人々が踊るのも忘れて、俺たちに見惚れているのが判る。
俺は微笑んだまま、しなやかに優雅にリードしながら姫を観察する。
と、姫は顔を上げ、俺を睨むように不遜な笑みをその美しい顔に浮かべる。
え?と俺は微笑む表情はそのままに、内心驚く。
エレオノーレ姫は僅かに唇を動かし、他の人には聞こえないような小さな声で「オズワルド様の方がダンスがお上手ですわね、あなたのは独りよがりだわ」と言い放った。
はあ?なんだと?!
俺はもう少しで立ち止まりそうになる。
ほっそりした腕をへし折ってやりたい衝動と戦いながら、なおも軽快なステップを踏んで華奢な腰を抱いて引き寄せ、耳許で囁く。
「貴女こそ、雌鶏の方がまだ華麗なステップを踏みますよ。
どこのド田舎で舞踏を教わられたのかな」
エレオノーレ姫の顔色がさっと変わる。
そこで曲が終わり、満場の拍手喝采の中、俺たちはお辞儀もそこそこに離れた。
エレオノーレ姫は羽がふんだんに使ってある、派手な扇で口許を隠しながら足早に広間を横切り、外の庭へ向かう。
オズワルドが慌てて後を追っているのが見えた。
何だあの女…美しく垢抜けた見かけによらず性格は最悪だ。
オーウェンは余計な心配していたみたいだが、あれは絶対にないな。
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