あるはずのないもの

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あるはずのないもの

私が勤務している会社は、全国各地に支店を構える雑貨の専門店。入社して2年になりますが、毎日楽しい職場です。理由は多分、従業員が皆雑貨が好きというベースがあるため雑貨好きあるあるを話せたり、接客好きでもともと人と話すのが好きだったりだからでしょう。そして明るい人も多いため、仕事終わりの飲み会も週に一度や二度ではありません。皆で楽しくワイワイ飲んで、朝までカラオケしてハイ解散!という学生のようなノリで、青春とはこんな感じかと思っています。そのノリも文科系なので、飲酒を無理強いしたり、セクハラなんてのも皆無です。 その日は、年に一度の棚卸しの日でした。 棚卸しとは、お店の正確な利益を計算するため、店頭に並ぶ膨大な数の商品と在庫管理表を付き合わせる、地味で時間のかかる作業のことです。退勤のタイムカードを押した時は、22時をとっくに過ぎていて、皆クタクタになりましたが、「このまま帰るのはつまらないね、打ち上げしようよ!」と言った堺さん(30代男性)の声をきっかけに、いつものメンバー6人位で、朝5時まで開いている居酒屋に繰り出しました。 「お疲れ様でした~!カンパーイ!」 「疲れたー。あまりの在庫数に、もう永遠に終わらないと思った(笑)」「途中、同じ列を何度も数えていて焦ったよ。」なんて話をして笑っていたら、ふいに河合さん(30代女性)が思い出したかのように言いました。 「そういえば、今日作業していて見つけたんだけど、3年前に佐藤バイヤーが仕入れたあのメッセージボトルが、倉庫にまだあったの。去年の棚卸しの時はなかったよね・・・?」 それまでワイワイおしゃべりしていた人達の会話が、急に止まりました。 メッセージボトル?
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