アイシテタ

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アイシテタ

 とんとん拍子に進んでいくお前の結婚話。  一馬が僕から離れていく日が、どんどん近づいていく。 「お願いだ。せめてその日までは一緒にいてくれ。ちゃんと別れるから」 「ごめん……瑞樹にそんなこと言わせるなんて。ひどい奴だと罵ってくれ。でも……ちゃんといるよ。ギリギリまで君の傍に」   「うん……ちゃんと分かってる。ちゃんと別れるから。しょうがないよ……事情が事情だし……」 ****  明日はお前の結婚式。  仕事帰りにいつものように駅で待ち合わせして、コンビニで缶ビールを二本だけ買った。帰り道はお互い無言で、白いレジ袋のカサカサとした音しか聞こえなかった。  僕の中では、一馬との最後の夜をこれから迎える事への緊張感が高まっていた。部屋に戻りすぐにお互い一本ずつビールを飲んでから、唇を優しく重ねた。  少し苦いキスだった。  一馬の嫁さんになる女性には悪いと思ったが、直前まで同棲を求めたのは僕の方だった。  未練がましいと思われても仕方がない。  でも最後の最後まで……せめて一緒に過ごして欲しかった。  だって僕は一馬のことを嫌いになったわけじゃないから。  引っ越しも終わり一馬の荷物だけなくなったアンバランスな部屋だったが、どうしても最後に抱かれたかった。 「最後に抱いてくれ……」 「いいのか」  まだ好きだ。  ずっと好きだ。  だけど、今日で別れる。  お互い切なく燃える眼をしていた。  一馬は僕を慣れた手つきでベッドへ連れて行き、そのまま押し倒した。 「アイシテル……瑞樹だけを」  あぁ……呪文のような愛の言葉を耳元で甘く囁かれ、何度お前に抱かれたことか。 「一馬……」 「抱くぞ」 「……うん」  優しい手つきで、いつもよりじっくり身体を辿られた。  一馬も僕の身体を、記憶に留めようとしてくれているのか。 「瑞樹はいつもいい匂いがするよ。花のような」 「ふっ……それは仕事柄だよ。フラワーデザイナーの先生と式場の花について打ちあわせすることも多いから、きっと移り香だよ」 「そうなのか……でも……これは瑞樹自身の匂いだ。瑞樹の残り香……ずっと忘れない」  首筋をべろっと舐められ、そのまま乳首まで辿られ舌先で先端を突かれると、腰がビクビクと震えてしまった。 「あっ……んっ、もう……そこはもうよせ」 「ここが感じるんだろう?瑞樹の身体は俺だけが知り尽くしているんだ。くそっ……」  きつい蕾に指を挿れられてグリグリと掻きまわされる。ゼリーによって濡らされたそこが、グジュグジュと卑猥な音色を立てるのをじっくり味わうように、一馬は熱心に僕を溶かし続けた。 「そろそろいいか」 「んっ……うっ……う……」  何度抱かれても、お前のサイズを受け止めるのはキツかったよ。でも挿入の痛みは最初だけ。乳首を同時に舐められ甘噛みされ、腰を掴まれ激しく揺さぶられると、僕の身体は一馬のためにどんどん開かれていった。  僕の中に一馬の張り詰めたものが挿入され、内部に熱をジンっと感じた。  でも……これはもう明日からは二度とやってこない熱だ。 「……アイシテル」 「でもお前は……明日、僕を置いていく」 「……ごめん……瑞樹をアイシテタ……」
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