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静かなサイレン
ほんとは、ずっとわかってた
その目も
態度も
匂いも
「わかってる、他に好きな人がいるんでしょ。」
「は…?」
いつものように夜中に帰ってきて、思いつめた顔で、話があるなんて言うから、
てっきりその話かと思えば、彼は私の予想に反して、目を丸くしてかたまった
そして散々、落ち着きなく目を泳がせたあと、予想外の言葉を口にした
「違うよ。そうじゃなくて、僕は…。僕は、警察から逃げてきたんだ」
「は…?」
今度は私が、かたまる番だった
「いきましょうか」
これ以上ない混乱を言葉にする間もなく、制服を着た人たちに連れられて、
彼はきえた
真っ白な部屋に膝をつき、からっぽになった私に残されたのは、目がチカチカするような赤い光とむなしく遠ざかっていく、サイレンの音だけだった
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